本シリーズ、第一回にあたる『陰陽五行の「陰陽」とは? 占い・東洋思想・漢方の基本の陰陽の世界』では陰陽の基本と、三才・五行論の基礎となる《陰陽の五定式》をご紹介しました。
上記が陰陽の五定式です。
第二回目の『陰陽における『三才の法則』 万物を形創る生・旺・墓のワルツ』では、万物は常に「三才」のリズムで成り立ち。
それには「天・人・地」「生・旺・墓」「過剰・中庸・不及」がある。
陰陽の「天・人・地」の組み合わせによって、万物は成り立ち。さらに「生・旺・墓」の強弱(或いはリズム)によって五行となる――。
ということを解説していきました。
そして、第三回目は陰陽のバランスの違いによって成り立つもの。
『五行とは? 陰陽五行「木火土金水」の成立ちを学ぶ。占い・風水・漢方の基本!』で東洋思想で用いられる「木火土金水」は自然の動きを符号化したものであるということ。
そして、それぞれがどのような象徴であり、どんな季節・環境・エネルギーによって成り立っているのかをご説明させて頂きました。
さて、前置きが長くなってしまいましたが《陰陽の五定式・三才・五行の働き》をある程度わかっていないと、占いにしろ、東洋医学にしろ、薬膳にしろ中途半端な理解になってしまいます。
まずはご紹介した3つの記事をさらっとでも良いので読まれみてくださいね。
万物はすべて陰陽で成り立ちますが、それは”最大公約数”であって、それを因数分解していくと「陰陽」▶▶▶「木火土金水」▶▶▶「九気」という形で細かく分類することが可能です。
それぞれに木火土金水のどれかの属性があり。異なるのは、それぞれの割合だけ。
例えば植物は「木気」というイメージですが、必ずしも木気100%ではありません。
バラのような植物ならば木気の中に「火気」がふくまれていますし、水草なら木気の中に「水気」が含まれています。
ただし、植物はあくまで植物です。
五系統の中に含まれる割合の中で「木気」が強いため「木気属性」として表されますが、その中で万物が占めるパーセンテージは、それぞれ異なるということを覚えておいてくださいね。
それでは陰陽五行論を理解するために欠かせない5つの属性の違いを網羅的にご紹介しましょう。
木気は、草花が一斉に芽吹き。すくすくと成長していく「春」を意味する気です。
春と言えば、アナタは何を思い出すでしょうか?
桜や卒業・入学……なんてことを思い出す方もいらっしゃるでしょう。
卒業、入学は子どもの成長を連想させますね。実は木気には「伸びる」「若返る」「若人」というような意味があり、若葉のように《若返る》という気という位置づけです。
また「春雷(しゅんらい)」という言葉もあるように自然現象として「電気」も木気にあたり、これは身体の成長や修復には電気の力が必要だからでもあります。
事実「電気」によって骨折が早く治ることは知られており、植物だけでなく、人間の成長にも木気――電気が用いられています。
雷は大きな音を出すので「うるさい」ですよね?
転じて「騒音」や「爆音」と言った音。
雷に揶揄される「素早さ」、スピード感や「電子機器」のパソコンやスマートフォンなども木気にあたります。
このように一口に木気と言っても、さまざまな性質を持つものが内包されているのです。
下記は木気の性質を大まかに分類した表です。
火、夏の働きを表す火気は「燃える」「燃やす」という意味合いだけでなく《成長が最大になる》というイメージが正しいでしょう。
草木は1年の中で、もっとも青々と輝き。燃えたぎる炎もまた人の目を引きつける。
人の目を引きつけるものはなにか?
それは権威だったり、美しさだったり――「有名人」「俳優」「女優」「勲章」「名誉」は火気の象徴です。
美しくなるためには飾り付ける必要がある。そこから転じて「美人」「メディア」「カメラ(マン)」となります。
さらに「激しいバトルの炎が~」と表されるように弁護士や裁判沙汰などは火気となります。弁護士には豊富な知識が必要である、また「●●に明るい」という言い方をするように「勉学」「知識」、それらに必要な「書籍」も火気となります。
ただし、火はいずれ消えて「全ては灰燼に帰す」ことから「虚栄」「見栄」も火気の象徴です。
このように「火」がどのような影響を環境・精神・人心にもたらすかを考えると、火気系統が持つ意味について理解しやすくなりますよ。
「土」は変化・殺滅性を持つ存在です。
五行の中では異質に見える気の種類かもしれませんね。
まず連想して欲しいのは「母なる大地」としての「土」です。
母性の象徴であり、全てを育むことから「母」「妻」「育成」「農業」などを意味します。
次に土が幾重にも重なると、今度は「山」となります。
土が積み重なり”変化”して山となる。
山は「山に登るのはそこに山があるからさ」という言葉にあるように、山は古来から人を引きつけ、信仰の対象ともなって来ました。
ここから転じて「変化(つなぎ目)」「山」「求心性」「信仰(神主)」「寺院」となります。
ずっと土に埋めていたものは、どうなりますか?
ボロボロになりますよね。これを「風化」と呼び、心が風化して虚しくなったり、物質・人体・精神が老化したり、最終的には消滅していく――。
万物はいずれ『earth to earth, ashes to ashes, dust to dust (土は土に、灰は灰に、ちりはちりに)』還っていきますが、それは「死」を意味します。
死から連想されるものは「葬儀」「破滅」「戦争」や「災害」「天変地異」などでしょう。
そこから深堀りしいていくと、破滅をもたらすのは「貪欲」「強欲」「怠惰」となり、それらによって社会や国が「腐敗」する。
その大きな原因は「指導者」「皇帝」である。
暗君たる皇帝は、いずれ討滅され「改革」となり、イエス・キリストよろしく、万物は一度は死を迎えるもののいずれは「復活」「再生」して新しいモノを生み出していく――。
このように土という意味を「風化」「変化」「破壊・再生」という3つの形で捉えられると理解しやすくなります。
金気、秋は夏の間に植物が栄養やエネルギーを蓄え、それを冬に備えて結実させる季節です。
季節が冬に近づいていくため空気が徐々に「冷却」され、空は秋雨こそあるものの「乾燥」した「秋晴れ」が目立つようになってきます
魚を乾燥させると「干物」となり、干し鮑やフカヒレなどは「高級品」「嗜好品」として富裕層に好まれます。
乾燥させると干物のように味や栄養を蓄えますが、これを転じて”エネルギー”と見ると植物・動物は冬に備えてエネルギーを蓄えるために「内在」し、「種(核)が成る」。
そう簡単に種や種子が奪われたり、壊れたりしては困るから外殻は「内を守る」ために「堅く」なる。
自分を変えようとしない、守ろうとする意識が強すぎると「頑固」な人になってしまいますが「志(こころざし)」があり信念があるのならば「堅実」「正義感」となる。
秋の冷却の働きの「内在」は「凝縮されていく」と言い換えることもできます。転じて長い間圧力を受け続けた物質が「金属」や「宝石」となったり、凝縮された技術が「武道」「学問」にも通じる。
そこから「銀行」「資本家」や「武道家」「学校」「運動場」となります。武道家は人を守るためですが、群れをなせば国を守る力にもなる――ということから「軍人」「軍隊」も金気であり、鉄(金属)で作られ軍人が使うものから「火器類」も金気です。
そして、資本家や武道家、教員や軍人を正しい方向へと導くための「統率力(リーダーシップ)」を持つ人が時代によっては神官だったり、教会だったり、政治家だったり、神だったりする。
ただし、それは報連相が「円満」に行くことが重要である。
円満の”円”から「丸いモノ」や「車輪」「運動場」「車」となる――というように「金」ではなく、秋の働きがもたらす「乾燥」「凝縮」「実り」「堅実」とそれに関わる環境や関連するものを連想させて何が金気なのかを覚えていきましょう。
水気、冬の働きは地上のモノすべてを凍結させてしまうほどの「熱を奪う作用」があります。
”気化熱”は「水分」が「蒸発」することによって行われます。
それは水が「循環」し「雨」や「雹」「雪」となり、時には「霧」となること。それらが「流れて」行き着く先が「川」「海」となる。
しかし、水が流れるためには落差が必要なため「下がる」や途中の「くぼみ」も水気の属性を持ちます。
水や水辺で起きる災害・事故、例えば「水害」や「水難事故」「溺れる」も水気ですね。
”溺れる”という字は「溺愛」ともなりますし。「色欲」に溺れたり、そういう場合は「愛人」関係や「女遊び」が活発です。
そこから「風俗関係」や「性病」「病気」「女難」「貧困」となる。
また”水商売”とも呼ばれるため「飲食業」「酒屋」は水気です。
ただ、性欲がなければ「受胎」「妊娠」することも「無から有を生む」ことはないため、決して悪いことやいかがわしく思ってしまうことばかりが水気ではないのです。
なぜなら海・水辺や水と深く関係している「漁師」「魚屋」や「温泉」「ダム」「水道局」「消防署」も水気の属性に含まれるからです。
あくまで水気の「冬」「水」「水辺」「蒸発」「循環」「無から有を生む」「交流」という最大公約数を分類した際に表される《人・物・環境・状況》を水気として細かく分類しているに過ぎません。
そこに善悪もなく、あくまで「水気」という属性でしかないということを覚えておいてくださいね。
(これは全ての五行の連想に当てはまる)
お気づきの方も多いかもしれませんが、五行の分類の中には類似したもの、共通したものが少なくありません。
例えば「土気」の「皇帝」は見方によっては「統率者」であり、現代では「首相」や「政治家」になります。
「皇帝」「首相」を国の中心としてを見れば「土気」ですが、政を司る存在として見れば「金気」です。
また金気の火器類は人を殺す「土気」と分類したり、火を扱うので「火気」として分類されることもありますが「爆発」して人を殺すなら「火気と土気」「騒音」を撒き散らすなら「火気と木気」です。
これら類似、或いは共通した五行の事柄は”どの視点から見るか”によるというのが答えです。
母親という存在を例に取ってみましょう。
母親なら土気ですが、家族の中で長女なら木気です。
女性として見れば水気が強いですし、金融関係で働くなら金気かもしれませんが、バッチリと化粧をした美人なら火気です。
このように”どの視点から見るか”という相対的な側面を意識して置かないと本質的な五行を見誤ってしまいます。
その視点は、アナタの主観です。
ただし、五行の五臓の分類のように予めどの気に当てはめて考えるべきかというような”五行としてのベースはそれぞれにある”ということをお忘れなく。
なぜなら万物は陰陽でできており、陰陽の中にも陰陽がある。陰陽の三才によって成り立つ五行も同じく、五行の中にも五行があり、全体の割合としては異なるものの、木火土金水の全てを内包し転化しているからです。
次のページでは五行の相性――相生相剋の関係について触れていきます。